研究概要 |
歯周炎罹患組織では,末梢血や組織中の単球が細菌内毒素(lipopo1isaccharide:LPS)の刺激を受けて,腫瘍壊死因子(TNF)を含む炎症性サイトカインを産生している。これらの作用によって炎症性組織破壊が起こるので,LPS刺激下の単球でのTNF産生を転写レベルで調節することを目的としている。 既に我々が得ているLPS-Induced TNF-α Factor(LITAF)遺伝子の発現を制御するために,LITAFのプロモーター領域をクローニングして,塩基配列を解析して,その領域に結合する転写制御因子を予測した。さらに,LITAFの転写開始点をprimer extension法で確定した。その結果,LPSの刺激で活性化されるNF-κBやAP-1などの他に,細胞の活性に関連しているAP-2やSP-1などの転写制御因子が結合可能な部位が予測できた。 また,既に我々が得ているTNF-αの特定なプロモーターに結合する核内蛋白を検出するために,One-hybrid Systemに用いるプローブとなるDNA断片を作成した。約90bpの特定なものを3重に連結した。今年度はここまでに留まっているため,今後はこれを用いて本systemを活用する予定である。 さらに,海外研究協力者とともにレポーター遺伝子を組み込んだAdeno virus系の発現ベクターを用いて,単球系細胞への遺伝子導入効率を検討中である。他方で,プラスミドベクターを用いて単球に遺伝子導入を行う系も国内で検討している。同時に,LPS刺激時に強く活性化されるNF-κBを抑制するため,NF-κBを抑制するIκBの変異体を強制発現させて,LPS刺激時にIκBの抑制が取れない系を樹立中である。この系によって,LPS刺激時のTNF-α遺伝子の転写を一部抑制できるとともに,NF-κB以外の転写制御因子の機能解析を行うことが可能になる。
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