研究概要 |
成人を対象とした歯周病のリスクファクターに関する総合的調査を,中垣と雫石が実施した.すなわち,中垣は,人間ドック受診者3,960名の歯周病と全身所見,喫煙や飲酒習慣について縦断調査を行った.その結果,肥満度・血圧判定・胃部X線判定・心電図判定および糖尿病判定,さらに喫煙は,歯周病との関連性が高いことを示した.事業所男性従業員を対象として歯の喪失とメンタルヘルスとの関連性について雫石が実施した.その結果,アレキシサイミアのようなパーソナリティが歯の喪失のリスクファクターになりうることが示唆された.また,侵襲性歯周炎のリスクファクターを把握する一助として,新成人116名を対象に,歯周病検診を庄司が実施した.その結果,侵襲性歯周炎患者では,健常者と異なるTH1/Th2比を示す可能性があることが判明した.次に,局所的リスクファクター,異常咬合や習癖,Bruxism,口呼吸について研究を進めた.すなわち,鈴木は,習慣性主咀嚼側における歯周病態と咬合接触状態との関連性を検討中である.坂上は,Bruxismを独自に開発した電子機器により精密に診断し,炎症に咬合性外傷が加わると,骨縁下ポケットだけでなく,歯根面でのセメント質吸収も惹起することを示唆した.内藤は,口呼吸について,学童の口腔内所見と歯周病所見および口呼吸の判定として重要な鼻呼吸の分類データを採取し,分析中である.全身的リスクファクター,糖尿病と骨粗鬆症について総合的疫学研究を進めている.萩原は,非外科的な歯周治療により2型糖尿病患者においても歯周組織の炎症症状がかなり改善されるが,糖代謝は影響を受けないことが示した.稲垣は,成人の骨粗鬆症と歯周病との関連について調査し,骨粗鬆症に関する自覚症状がなくても定期的な骨粗鬆症検診が必要であり,歯周病罹患者では,一般のスクリーニング以上に検出率が高く,その進行と骨粗鬆症の病態との関連性を示唆している.
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