研究概要 |
1.生理活性、触媒活性が期待される大環状化合物の合成 我々が、オリジナルに発見し、De Clercqら、ベルギーのグループと競っている新たな抗HIV剤、大環状テトラアミン誘導体の生化学的な新規の作用機構を明らかにした。医学部の研究室との共同研究によって、良好な抗HIV活性を持つ誘導体も見い出した。このように我々は、今までの大環状ポリアミンの知見を生かして、ポリアミン骨核の変換や側鎖の変換、ハイブリッド化合物の合成など、コンビナトルアル化学手法を用いてその活性構造化学を展開した。 2.多核金属錯体を素子とするpH-依存性の可逆的自己集積型超分子創造 我々は昨年、三核亜鉛錯(M=Zn^<2+>, R=H)とシアヌル酸(CA)は、水溶液中で、pHに依存して2:3または4:4の自己集合球状カゴ型ナノスケール分子が生成することを発見し、従来の脂溶性超分子とは全く異なる新規超分子を創造した。また、そのカゴ内に、アダマンタンやそれに類似したサイズの生理活性物質を包接できることを見い出した。このように、分子捕捉、イオン捕捉、捕捉分子の化学反応性などを追求する新たな化学を展開した。 3.遺伝子発現を制御する新概念の小分子開発(遺伝子科学への展開) 核酸二重鎖、RNA、リボザイム等と相互作用(minor groove binding)して遺伝子の転写を制御する金属錯体の開発を行った。Zinc Finger蛋白と大環状化合物との相互作用や、(CG-box)-Zinc Finger-大環状化合物相互作用を見い出し、実際に特定の遺伝子転写の阻害効果を持つことを明らかにした。
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