研究概要 |
(S)-ジアセトキシビナフチル-λ3-ヨーダンにLewis酸(BF3-Et20)存在下アルキニルシランを作用させ、ケイ素-ヨーダン交換反応を試みたところ、確かに目的のアルキニル-λ3-ヨーダンは少量得られてきたが、分子内環化が主として進行し環状λ3-ヨーダンが生成した。より反応性の高いアルキニルスタンナンを用いたところスズ-ヨーダン交換反応が効率良く進行し、アルキニル-λ3-ヨーダンが高収率で得られた。酢酸のMichael付加も問題なく進行し目的とするβ-アセトキシビニル-λ3-ヨーダンの合成に成功した。 β-アセトキシビニル-λ3-ヨーダンにEtOLiを作用させてキラルなモノカルボニルヨードニウムイリドを発生させ、isobutyraldehydeと反応させると、トランスα,β-エポキシケトンが77%の不斉収率で得られた。反応はTHF-toluene1:9の混合溶媒中で実施した。ベンジル基を導入したビニルヨーダンを用いると不斉収率が90%まで向上した。他のアルデヒドとの反応も検討した。なお、絶対配置は何れの場合もαS,βRである。 反応の遷移状態において、ヨードニウムイリドのα側はビナフチル基により占められているため、アルデヒドはβ側から近付き、アンチ型の遷移状態を経て反応しαS,βR-エポキシケトンが得られたと考えられる。なお、2'位のベンジル基はより効果的にヨードニウムイリドのα側をブロックしていると思われる。 現在のところ、α,β-アジリジノケトンの不斉収率は低い(49-65%)。今後はこれらの反応を触媒的不斉合成へと展開する予定である。
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