研究概要 |
超原子価有機ヨウ素化合物は高い酸化能を有し各種官能基を容易に酸化するが、これを不斉合成反応に活用し、高い不斉選択性を発現させた例はない。我々は炭素配位子上に不斉源を組み込んだ最初の光学活性超原子価有機ヨウ素化合物として、ジアセトキシビナフチル-λ^3-ヨーダンの不斉合成に成功している。本研究では超原子価ヨウ素を活用する不斉合成反応の開発について検討し、以下の成果を得た。 1)(S)-ジアセトキシビナフチル-λ^3-ヨーダンにPh_4Snを作用させたところ、スズ-ヨーダン交換反応が効率良く進行し、不斉ビナフチルアリール-λ^3-ヨーダンを収率良く合成することに成功した。また、合成した不斉ビナフチルアリール-λ^3-ヨーダンの超原子価ヨウ素原子上の立体化学をX線結晶解析により決定した。ビナフチル基の2'位にメチル基やベンジル基を導入した不斉アリール-λ^3-ヨーダンの合成も実施した。更にこれらの合成したλ^3-ヨーダンを用いて、エノラートアニオンの直接的不斉フェニル化反応の開発に成功した。 2)(S)-ジアセトキシビナフチル-λ^3-ヨーダンにLewis酸存在下アルキニルスタンナンを作用させたところスズ-ヨーダン交換反応が効率良く進行し、アルキニル-λ^3-ヨーダンが高収率で得られた。酢酸のMichael付加も進行し目的とするβ-アセトキシビニル-λ^3-ヨーダンの合成に成功した。このλ^3-ヨーダンにEtOLiを作用させてキラルなモノカルボニルヨードニウムイリドを発生させ、isobutyraldehydeと反応させると、トランスα,β-エポキシケトンが90%を越える不斉収率で得られた。
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