今日、ゲノム解析によりヒト遺伝子の多くが解明されつつあり、これを基に生命の維持、生理作用発現に関わるタンパク質の機能解析、すなわちプロテオーム解析が21世紀の生命科学の大きなテーマとなってきている。遺伝子のコードに従って作製されるタンパク質は、それ自身、または修飾を受けた後、高分子あるいは小分子生理活性物質と相互作用することによってその機能を発現する。このため、三次元構造を含めた蛋白の構造を正確に把握することがその機能を分子レベルで解析するうえできわめて重要となる。そこで、本研究では、pmole以下という微量な蛋白量で、機能発現に必須な相互作用部位を含めた構造を解析し得るシステムの構築を目的とし、本年度は以下の成果を得た。 まず、デオキシコール酸をプローブ分子として取り上げ、ウシアルブミンとのハプテンーキャリアー複合体に導いたのち、マウスに免疫し、特異性に優れるモノクローナル抗体を調製するとともに、これを固定化して用いるデオキシコール酸-タンパク質付加体の特異的イムノアフィニティー抽出法を構築した。引き続き、培養細胞中タンパク質の分離法に検討を加え、二次元電気泳動法、細胞分画法及び硫安分画法を組み合わせる効率的な分画法を設定した。さらに、HeLa細胞を例に取り上げ、設定した分画法により、細胞内タンパク質を分離したのち、任意のタンパク質24種を取り出し、トリプシンによる酵素消化に付し、得られたペプチドフラグメントをマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法により測定し、ペプチドマスフィンガープリンティング法による解析を行った。その結果、いずれもタンパク質も同定が可能であり、プロテオーム解析に有用なことが判明した。 以上の結果をもとに、次年度はより高感度化を含めた吟味を行う。
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