研究概要 |
ラット胎児ではFGF16は褐色脂肪組織に特異的に発現してぃた。FGF-16は褐色脂肪細胞の分化開始以前に発現しており,分化の開始とともに,その発現は急激に減少していることを示している。従って,FGF16は極めてユニークな因子であり,褐色脂肪組織の形成に重要な役割を果たしていると考えられる。一方,FGF-10は成体の組織のなかで,白色脂肪組織に特異的に高発現しているFGFである。白色脂肪組織は主として未分化な脂肪細胞である前駆白色脂肪細胞と,分化が進み脂肪滴が蓄積した成熟白色脂肪細胞より構成される。FGF10は成熟白色脂肪細胞にはほとんど発現せず,前駆白色脂肪細胞に特異的に発現している。さらに,初代培養前駆白色脂肪細胞に対して,FGF10は細胞増殖活性を示した。このことはFGF10は前駆白色脂肪細胞で特異的に合成され,autocrine/paracrine的に働く前駆白色脂肪細胞に対する増殖因子であると考えられる。出生直後の野生型とKOマウスの白色脂肪組織を調べた。野生型マウスでは,白色脂肪組織はすでに形成され,脂肪滴の蓄積が進んでいた。一方,FGF10KOマウスの白色脂肪組織は発達しておらず,脂肪滴の蓄積は見られなかった。このことはFGF-10は白色脂肪組織に特異的な因子であることを示している。 FGF18はFGF8と構造上の類似性を示すFGFとしてラット胎児より同定された。FGF18は,特に,内軟骨性骨化がおこる予定骨形成領域の間充織の凝集部位や,膜性骨化がおこる前駆骨細胞に高発現していることから,骨・軟骨形成におけるFGF18の役割が期待された。最近,我々が作成したFGF18KOマウスは頭蓋冠萎縮,四肢の長骨の短縮,脊椎骨の萎縮や脊柱の彎曲などの骨形成に異常が見られた。これらのことは,FGF18は骨・軟骨形成に重要な役割を果たしていることを示唆している。
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