薬物-受容体蛋白質相互作用系の解析は、分子系生命科学の先端的重要課題の一つである。光アフィニティーラベル法は、この相互作用系を共有結合で瞬時・非可逆的に固定し、リガンド結合部位を知る化学的な直接解析法である。しかし、従来法は解析に多くの時間と労力が必要であり、ポイントミューテーション等の遺伝子操作による間接的解析法に比べて開拓が遅れていた。ごく最近、申請者による非放射性の「光アフィニティービオチン化法」により解析過程が大幅に効率化され、光アフィニティーラベル法による高速解析への端緒が開かれた。本研究では、この高速解析法をさらに発展させるため、固相上に集積した高速解析用光アフィニティープローブを新たに開発し、最先端の質量分析法によるフェムトモル量の微量配列解析との組み合わせを視野に入れた、従来法を大きく超えるこれまでにない効率的方法論の開拓のため、目標を大きく二つに分けて課題解決に取り組み、1固相上へのプローブ導入および2固相ラベルの実施において、本課題が目標とする固相高速光アフィニティーラベリングの方法論的基礎を確立した。 これらを要約すると、 1.固相上へのプローブ導入:微量の糖鎖を無保護のままプローブ合成に利用できる高効率的方法、光反応性のフェニルアラニン不斉合成法とその大量合成法、これを用いるペプチド合成への応用、光反応性DNAの効率的合成法を開拓した 2.固相ラベルの実施とKnow-How確立:固相上での蛋白質補足、切り出し、質量分析装置による高速解析等の諸段階において固相ラベルを実施する上での基本的なKnow-Howを蓄積した。また、一部リガンドにおいては、ラベル部位解析結果を基に、ドッキングモデルを作成し機能構造の解析に成功した。
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