研究課題/領域番号 |
12470512
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
濃沼 信夫 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (60134095)
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研究分担者 |
伊藤 道哉 東北大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (70221083)
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キーワード | 糖尿病 / 糖尿病性腎症 / システムモデル / 経済分析 / 費用便益分析 / 生涯医療費 / QALYs / 罹病期間 |
研究概要 |
【目的】糖尿病治療に関するシステムモデルを開発し、医療経済とQOLの面から予後経過をシミュレーションするとともに今後優先すべき糖尿病対策を明らかにし、政策決定や臨床判断の基礎資料をうる。 【対象と方法】患者調査、国民生活基礎調査等により、昨年度開発した糖尿病の臨床経過に関するシステムモデルの精緻化を行った。また、糖尿病診療を精力的に実施する2施設で231名の糖尿病患者の受療期間、治療法、コントロール状況などを調査し、モデルの信頼性、妥当性を検証した。 【結果と考察】(1)モデルから、糖尿病の年間新規罹患数は32万7千人、初診後の平均余命は一般よりも3.4年短い23.0年、QALYs(質で調製した生存年)は18.8年、Cost/QALYは63万円である。 (2)罹病期間別に合併症の発生状況をみると、罹病20年未満で1つ以上の合併症を有する割合は、腎症24.1%、網膜症22.9%、神経障害11.5%、虚血性心疾患9.0%、脳血管疾患3.6%である。同じく2つ以上の割合は、腎症と網膜症9.0%、腎症と神経障害7.3%、網膜症と神経障害7.3%などである。 (3)モデルを用いて死因分析を行ったところ、脳血管疾患11.9%、虚血性心疾患11.5%、糖尿病性腎症4.8%となる。若年層では糖尿病による死が多く、罹病期間が短いため腎症に罹らず血管疾患で亡くなる場合が少なくない。年齢が進につれ一般死の割合が増え、糖尿病と合併症の進行により腎症による死亡者数の数が増える。 (4)糖尿病の生涯医療費と生産額とのバランスシートを算出すると、男の便益比は2.49、女は0.61と性差が大きく、女では医療費が生産額を上回る。 (5)モデルで得られた結果を先行研究と比較すると、昨今の治療法の進歩を斟酌すれば本モデルの各種パラメータのバランスは妥当であり、感度分析によってもモデルの信頼性は高いと考えられる。
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