研究概要 |
今年度は,本研究をすすめるために必要な,何らかの疾患や臨床症状と関連した染色体均衡型構造異常(disease-associated balanced chromosome rearrangements:DBCRs)症例の詳細な染色体解析結果と臨床症状の情報を集めるための活動を行った.まず,日本人類遺伝学会第44回大会で本研究の趣旨について発表し,「疾患に関連する染色体均衡型構造異常症例のデータベース化と株化細胞保存の重要性」を広く呼びかけた.特に日本の染色体検査のほとんどを請け負っている大手検査センターの関係者と染色体異常の患者を多く看ている小児病院あるいは小児科で臨床遺伝に関わっている医師らからなる小児病院臨床遺伝懇話会のメンバーに情報提供の依頼をした. しかしながら本年度は,ミレニアムプロジェクトと関連して遺伝子解析研究についての倫理指針の検討が各省庁で進められ,患者情報を扱う本研究においてもより慎重な取組みが必要となったために,国としての指針がはっきりするまで本格的に情報提供を依頼するのを見合わせた.指針の方向性が見えてきた2001年1月に,患者・家族に研究協力の同意を得る際にお渡しする,研究の趣旨や方法についての説明書の内容や同意書の書式を新たに検討した.当研究を学内の倫理委員会に申請し,2月に正式に許可を得た. すでに収集していたDBCRs数症例(肥満,モヤモヤ病,自閉症,食道閉鎖,精神遅滞等)については,すでに座位の決定しているYACクローンを得て,今年度導入した蛍光顕微鏡を活用しFISH解析によりDNAレベルでの切断点を明らかにすべく解析を進めた.さらに,切断点のより詳細な解析に有用なBACクローンの入手方法などの新しい情報を得たので,次年度以降,新たな症例の蓄積・データベース化を推進するとともに,効率良く種々の疾患のボジショナルクローニングを進めてゆきたい.
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