研究概要 |
先頃私は,日本人男性のY染色体をDNA多型を利用して4つに分類し,それぞれのハプロタイプの男性の精子数を調べると,ハプロタイプ毎に精子数が有意に異なること,また,精子数の少ないタイプは,他のタイプに比べて無精子症になりやすいことを報告した。このことは,Y染色体上の遺伝子の働きまたは構造が,タイプにより異なっている可能性を示している。そして提出されたさまざまな疑問のうち,1.男性のグループ間で精子形成能以外の他の表現型も違うのか。すなわち,精子数が少ないことを補う表現型があるのか。 2.実際の歴史の上で,それぞれのタイプの男性の割合(シェア)がどのように変化したか。 という,2つの疑問を明らかにするために,ヒトの個体差,ヒト集団の変化についての知見を得ることが本研究の目的であった。 本研究期間中に研究対象としたのは,コントロール(タイプ不明の男性および女性)を含めて,日本の4地域の男性集団(約900人:データ集計中)と本学の医学科学生で遺伝子解析の同意が得られたもの男女を合わせて347人である。学生検体のうちハプロタイプ情報が得られた男性が191人である。 これらの対象から得られた,体格のデータ,栄養摂取のデータ,血液生化学データ,家系図のデータ,性格テストデータについて解析した。日本の4地域のサンプルについては,他機関との共同研究に歩調を合わせるために,まだ統計解析ができていない。一方,学生のデータについては,探索的解析を行った。男性集団間に違いが観察された項目は,摂取エネルギー,運動強度,GPT,その他であった。また,研究期間中にY染色体の分類をより細かく分類できるようになり,縄文系のY染色体と弥生系のY染色体の分類がほぼ可能となった。
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