研究概要 |
昨年度,われわれは,特定の染色体についてGバンドに一致したバンド単位におのおの異なった色調で識別することが可能な新しい染色体カラーバンディング法としてspectral color banding(SCAN)法の開発に成功した。本年度は,Gバンド法でもspectral karyotyping(SKY)法でも完全に解析できなかったさまざまな染色体異常にSCAN法を適用し,有用であるかどうかを評価した。そして,以下の結果を得た。 1.SKY法は染色体単位でしか異常の由来を同定できないという制限があったが,SCAN法によって1バンドに相当する短い染色体断片のバンド由来を同定することができた。 2.SKY法は染色体ペインティングプローブを用いている性質上,異なる染色体間の転座の検出には偉力を発揮するが,同一染色体の内部での構造異常(逆位,重複など)は色調の変化としてとらえることができなかった。しかし,SCAN法によって重複を検出することができた。 3.複雑な構造異常の場合は,Gバンド法でもSKY法でも切断点を決定することは困難である。しかし,SCAN法によって,複雑な染色体転座でも切断点を精確に決定できることが明らかになった。特に悪性リンパ腫の2症例で,SKY法でも切断点が同定できなかった複雑な染色体転座にSCAN法を適用し,いずれも新規の3q27転座を検出できた。両者ともFISH法で3q27バンドに存在するBCL6遺伝子内での切断が明らかになり,SCAN法の結果が正しいことを確認できた。 上述の1〜3のようなGバンド法やSKY法でも完全に解析できなかった染色体異常を,SCAN法は同定することができる。SCAN法によってGバンド法やSKY法の限界や欠点が補完され,一段と精度の高い染色体解析が可能であることが示された。
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