研究概要 |
これまでに尋常性乾癬感受性候補領域として、6番染色体のHLA領域がよく知られていた。しかしながら、乾癬は単純なメンデル遺伝性を示さない多遺伝子性疾患であることから、他の領域における複数の感受性遺伝子の存在が想定されてきた。そこで我々は、全ての乾癬感受性遺伝子を同定することを目的に、(1)マイクロサテライトマーカーを用いたゲノムワイドな遺伝的相関解析、(2)マイクロアレイを用いたゲノムワイドな発現遺伝子マッピング、という二つのアプローチで乾癬感受性遺伝子の同定を試みた。 現在までに、(1)のアプローチでは4,6,16,17,20の5染色体について解析が進んでいる。6番染色体についてはHLA領域での相関が得られ、既報の結果が確認されると共に、他の染色体においても有意な相関を示す領域が多数見出されている。(2)に関しては、Affymetrix社のGeneChipシステムを導入することにより、同一患者の患部と非患部について63,000種類の遺伝子の解析が既に終了している。こちらに関しても、既知遺伝子について既報の再現性が得られた一方で、これまでに報告の無い、新規な遺伝子断片(EST断片)が多数得られている。これらの新規ESTについては、現在全長クローニングを進めており、クローニング後はin vitro、in vivoの機能アッセイ系による疾患発症への関与の有無を検討する予定である。 現在、(2)のアプローチで調査した全ての遺伝子の、染色体上へのマッピングに取り組んでいる。このマッピングデータベースを完成させることにより、(1)の結果と(2)の結果を有機的に結びつけ、尋常性乾癬感受性遺伝子同定の効率化・迅速化をはかりたい。それと同時に、これらの取り組みを通じて、多遺伝子性疾患の感受性遺伝子同定におけるフレームワークを世界に先駆けて確立し、積極的にアピールしていきたい。
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