研究概要 |
ポリエチレングリコールによる表面修飾により,血中滞留性リポソーム(LCL)の開発に成功し,現在欧米では,抗癌剤のドラグキャリアーとして,臨床に用いられるに至っているが,耐性を獲得した癌細胞に対しては,更なる改良が必要であることは言うまでもない.我々は,「耐性癌細胞においては,細胞膜を拡散で透過させることは難しいので,キャリアーを用いてエンドサイトーシスの経路を介して細胞内へ送達し,細胞内で抗癌剤を放出させれば,一部の抗癌剤がポンプにより細胞外へ汲み出されても,ある割合で細胞内の作用部位へ送達が可能になるであろう」と考え,LCLを用いることにより癌組織のリーキーな毛細血管を選択的に透過し,癌細胞にup-regulateしているレセプターを標的としてレセプターを介したエンドサイトーシスにより細胞内へ導入し,細胞内動態を制御することにより最も有効な放出速度と放出部位の最適化を行うことを目標としている.平成12年度は,トランスフェリンレセプターを標的として,肺癌耐性細胞に対してTF修飾リポソームを用い,ドキソルビシン(DOX)のIC_<50>を約10倍減少させることに成功した.本研究では,耐性癌細胞に選択的に発現している細胞表面レセプターとして,トランスフェリンを選択し,レセプターアッセイ,及びリガンドの表面修飾最適化に関する検討を行った.レセプターを介したエンドサイトーシスで細胞内に導入したあとの細胞内動態制御は,それぞれのレセプターの細胞内動態に対応した制御が必要となる.トランスフェリンレセプターのようにリサイクルするレセプターの場合エンドソームからの放出速度の制御が必要で,GALA-脂質誘導体により抗癌剤の放出速度の制御に成功した.
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