研究概要 |
平成14年度は,In vitroで耐性癌細胞における抗腫瘍効果増強を目指したキャリアーの細胞内動態の最適化を行った.その結果,トランスフェリン修飾リポソームは,トランスフェリンレセプターを介してK562細胞に取り込まれ,リポソーム封入物質及びリポソーム膜とトランスフェリンは細胞内コンパートメントに局在することが明らかとなった.通常,トランスフェリンは細胞膜へとリサイクルするが,リポソーム修飾することで細胞内コンパートメント(おそらくライソゾームと思われる)に局在した.pH-依存性膜融合ペプチドGALAを脂質誘導体とすることにより,トランスフェリン修飾リポソームに内封した蛍光マーカーを細胞質中へ遊離させることが可能となった.この機構を解明するために,FRETによる膜融合をin vitroで検討したところ,pHを7から5へ低下させることにより,著しい膜融合が観察され,同時に,リポソームの粒子径が大きく増大した.これらの結果は,GALA-脂質誘導体により,エンドソーム膜とリポソーム膜の融合が起こることにより細胞質中への放出が起きていることが示唆された.この膜融合仮説は,GALA脂質誘導体を用いた場合に見られる,トランスフェリンの細胞膜集積性をも良く説明することができ,GALA-脂質誘導体の作用機構として有力と思われる.
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