研究概要 |
血行力学刺激の受容応答機構,メカノトランスダクションの全体像を捉える研究の本年度の実績概要を示す. 1)機械力学受容の細胞内情報伝達多様性 1.家兎肺動脈における血管内皮依存性収縮 伸展刺激により,内皮依存性に種々のプロスタノイドが産生る.これらの内,プロスタグランジンH_2がRGD配列ペプチド非依存性経路により産生され,収縮を誘起することを見いだした. II.イヌ脳底動脈における機械力学受容応答反応 インテグリンが伸展刺激を感受し,Srcチロシンキナーゼを活性化する.さらに,SrcはRho/Rho-キナーゼを活性化し,これによりPKCδの筋膜への移行が誘起されることを示唆した.また,低浸透圧性伸展刺激による筋原性収縮発現過程を明らかにした.即ち,機械的伸展によってGd^<3+>感受性陽イオンチャネルを開口し,流入したCa2^2+などの陽イオンが,Ca^<2+>-activated Cl^-チャネルを活性化し,内向き電流によって膜の脱分極が誘起される.これによってL型Ca^<2+>チャネルが活性化され細胞内Ca^<2+>が上昇することで収縮が生じることを明らかにした. 2)機械力学受容応答と実験的病態 循環系疾患基盤に存する高血糖,肥満などの危険因子に着目し,例えば,脂肪細胞への力学刺激負荷が,Erk-1/2の活性化とPPAR-γを介した脂肪細胞分化の抑制の可能性を示した.また,骨格筋への伸展刺激の負荷がグルコース輸送担体(Glut4)の筋細胞膜への移行を明らかにした.また,膵β細胞におけるグルコースによるインスリン遊離機構への機械力学受容応答の関与の可能性を示唆した.さらに,血行力学刺激局所的過剰モデルである低酸素誘発肺高血圧症動物(マウスなど)の方法を確立しつつある.以上の成果を英語論文として投稿し,平成14年3月開催の薬理学会年会および薬学会年会においてシンポジウムを組織し,発表を行った.
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