本研究の目的は、早産児の痛みの日常的な観察指標として活用できる行動学的指標を開発することであった。対象は、在胎32週未満で出生し神経学的に異常のない早産児で、親から研究協力への承諾が得られた26名であった。修正齢27〜35週における97処置場面(足底穿刺や手背穿刺による採血、栄養チューブの挿入と抜去)をビデオカメラで撮影し、安静時と処置時のデータを比較した。顔面表情運動は定性的および定量的に分析し、両者の関連を統計学的に検定した。身体の動きは定性的に分析し、顔面表情との関連を探索した。心拍・呼吸数は定量的に分析し、顔面表情との関連を探索した。その結果、次のことが明らかになった: 1.心拍・呼吸数は、採血中の消毒時と穿刺時に同様に上昇し、痛み刺激に特有な反応ではないことが確認できた。 2.身体の動きは、肩や胴体のねじり・四肢の屈伸が採血時の穿刺や搾りにおいて認められ、栄養チューブの挿入や抜管時には認められなかった。 3.顔面表情は、顔面に形成される皺や溝の程度によって12の表情が抽出され、それらは顔面の面積変化率(左右の眼窩上縁・その中間点・鼻根部を結ぶ多角形面積)に4つに分類することができた。4群間には5%水準で有意差を認めた。また、刺激の違い(採血と栄養チューブの挿入・抜管)によって2つに分類できた。 上記の結果から、4つの顔面表情に身体の動きの有無を組み合わせたペインスケールを作成することができた。今後の課題は、早産児の痛みのケアのために臨床で広く使用できるよう、本ペインスケールの信頼性(安定性)および妥当性(併存妥当性)を検証することである。
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