研究概要 |
短時間あるいは長時間の連続的および間欠的な持久運動では,運動中に乳酸や水素イオンなどが生じるので,これらを運動中や短時間の休息中に除去する能力である重炭酸系および非重炭酸系緩衝能に優れていなければ,高い遂行能力を獲得することはできない。そこで本研究では,連続的および間欠的な持久運動の遂行能力と重炭酸系および非重炭酸系緩衝能との関係を明らかにするために,重炭酸系緩衝脳の指標であるCO_2excessの定量法の確立(研究課題1),持久運動におけるCO_2excessおよび安静時の筋蛋白量(カルノシン)からみた各種スポーツ競技者の特性(研究課題2),持久運動におけるCO_2excessおよび安静時の筋蛋白量に対する各種体力トレーニングの影響(研究課題3)について検討している。 平成12年度には,(1)漸増負荷運動中における非代謝性CO2排出量(CO_2excessと意味は同じであるが,算出方法が若干異なる)とHCO_3^-の減少のタイムコースは同じであること,および非代謝性CO_2排出量とHCO_3-の減少量との間に有意な高い正の相関関係があること(研究課題1),(2)漸増負荷運動中において呼気ガス分析により算出されるCO_2excessは.isocapnic buffering phaseでの仕事量と有意な正の相関関係のあることから,代謝性アシドーシス開始の遅延に貢献している可能性のあること(研究課題1),(3)骨格筋カルノシン濃度は,TypeIIb線維の割合が高いものほど高く,またこの濃度が高いものほど高強度運動の後半のパワーが高いことから,高強度運動パフォーマンスの成績を左右する非重炭酸系緩衝能の指標として有効であること(研究課題2),(4)レジスタンストレーニングによる筋量の増加によって.重炭酸緩衝系の貢献度(CO_2excess/BW/ΔLa)は向上するが,その全緩衝に対する割合は低下することから,筋量の増加によって非重炭酸緩衝能が相対的に高まる可能性のあること(研究課題3),などの知見が得られた。
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