研究概要 |
高気圧酸素療法は環境圧を上げ酸素を付加することによって血漿中の溶存酸素を増やし,末梢組織に多くの酸素を送ることを可能とした治療法で,一酸化炭素中毒や減圧症などの救急医療や,感染症、脳血管障害などの慢性疾患など,主に医学的治療法として幅広く使われてきた.最近、英国で従来のシステムとは異なった装置が試作されスポーツ医学の分野に利用され注目されている.治療のねらいはスポーツ傷害に対する早期治癒の効果や高強度の運動後における早期疲労回復の手段であるが、その効果について研究すべき問題点が多く残されている.そこで,われわれは主としてスポーツ傷害治癒促進と全身コンディショニング向上における高気圧酸素療法の有用性に関する観点から研究を行ってきた.今年度我々は動物の靭帯損傷モデルを作り,高気圧酸素療法を行って形態的,生化学的(血液、尿)治療促進過程をみた.また,TypeIおよびTypeIIIprocollagen m-RNA,growth factor(PDGF,TGF)の影響を遺伝子解析(RT-PCR法,in site hybridization法)を行い,損傷の回復促進を確認した.Orthopaedic Research SocietyやUndersea and Hyperbaric Medicine学会などの国際学会において発表した. 日本では欧米に比べプロスポーツ選手を取り巻くスポーツ医学の歴史が浅いこともあり,スポーツ医学の分野における高気圧酸素療法はほとんど行われておらず,有用性の検討はきわめて意義があると思われる.さらに来年度からは,筑波大学と国立スポーツ科学センター設置準備室および経済産業省産業技術総合研究所と協力研究して行く予定である.
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