研究概要 |
我々は,スポーツ障害や外傷からの治癒回復促進の方法として,また疲労回復,コンディショニングの向上においても有用性が高いと考えて研究を行ってきた。昨年度までは基礎実験として高気圧酸素を使ったラットの靱帯損傷部位のType I Collagenの増加,靱帯粘性の影響,In vitroにおける断裂前十字靱帯の細胞の酸素濃度の違いによる影響を報告し,臨床研究としては男子大学生に対するケガの治癒効果や長野オリンピックでの代表選手の使用効果などを報告してきた。現在は損傷組織に対する高気圧酸素の至適条件や局所投与の手法を用いた治癒促進に注目して研究を継続している。今年度は高気圧酸素の至適条件としてはラットの膝蓋靭帯部分断裂のタイプIプロコラーゲンmRNAの合成に関して設定条件を大気,15気圧30分,2気圧30分,2気圧60分の4つにて比較したところ,2週間後には高気圧酸素を行った3群では組織所見においてはそれぞれ大気中での治癒過程に比べてコラーゲン組織で覆われており,さらに高気圧酸素療法を行った3群間で比較すると2気圧60分,2気圧30分,15気圧30分の順に組織回復が早い傾向が認められたことを報告した((J Orthop Res, Vol20,70-73,2002)。さらに,局所投与の手法として高気圧酸素の簡易バックを利用した方法を取り入れて病院との共同研究を行うとともに,靱帯断裂に対して局所酸素注射の開発を行い学会発表を行った。2002年に日本でワールドカップサッカーが開かれた際に代表選手の数人への高気圧酸素の使用が報道されたが,我々の積み上げた研究結果がこの好成績に寄与したものと考えている。
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