研究課題/領域番号 |
12480003
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮永 豊 筑波大学, 体育科学系, 教授 (90010371)
|
研究分担者 |
向井 直樹 筑波大学, 体育科学系, 講師 (70292539)
白木 仁 筑波大学, 体育科学系, 助教授 (90206285)
|
キーワード | 高気圧酸素 / 軟部組織損傷 / 治癒促進 / 局所投与 / 酸素注射 / 活性酸素 / 副作用 |
研究概要 |
軟部組織の傷害治癒促進における高気圧酸素療法(HBO療法)の有効性はこれまでの研究結果から実験的、臨床的に明らかになった。しかしながら、酸素暴露による耳鳴りや頭痛などの副作用が少数例で、しかも極めて軽度ではあったが認められたのは事実で、安全面の検討とともに副作用を極力少なくする工夫が肝要と思われ、以下の2つの実験を重ねた。 1.局所的な酸素供給の試み:今までの高気圧酸素の投与方式は全身投与であり、いわゆる2ATA以上の高濃度酸素はこの方式で実施されているのが普通である。しかしながら健康人への投与には少数ではあるが副作用を伴う。そこで局所的な酸素投与の効果を検討した。まずラットの実験的靭帯損傷に対する酸素の注射療法によると局所酸素分圧は334.6mmHgまで上昇し、コントロールに比し血管の形成を促進することが、VEGFmRNAは減少することが判明した。また肉眼的、組織学的にも治癒の促進がみられた。このことは、初めての試みである酸素の注射療法が靭帯損傷の治癒には有効であることを示している。さらに臨床的には解放創(難治性潰瘍)に対し、polyethyleneの袋を利用し1日1回、1回1時間、局所的高気圧酸素療法を行い小経験ながら好結果を得た。副作用は全く認めなかった。 2.活性酸素の測定:自覚的には「体が楽になった」、「気分良く寝てしまった」、「投与後にリラックスした」など多くは肯定的な感想であり、エリートスポーツ選手からの複数回の酸素暴露の希望が多かったが、副作用として軽度の耳痛、頭痛がみられた。1.3ATA下での全身投与を行ったところ、最近のフリーラジカル分析システム(FRAS:正常値250〜300単位)による測定では投与前平均210.6、投与後201.2といずれも正常範囲であった。高気圧酸素による酸化ストレスの程度は全く問題にはならないことが判明した。 以上により高気圧酸素の投与は酸化ストレスには至らないが、全身投与だけでなく局所投与も有用性が高いことが判明した。
|