研究概要 |
本研究の目的は,月齢が9ヶ月から15ヶ月の男児5名を対象として歩行から走運動への移行過程を32ヶ月間にわたり継続的に観察することによって,移動運動の発達をとらえることであった.被験児は,健康な男児5名であり,これまでに走動作が確認されていないものであった.自由な外遊びの中で被験児の移動運動が撮影できるような範囲を設け,2台のビデオカメラを設置(撮影速度:60fps,露出時間:1/1000)した.撮影された画像データをもとにDLT法によって3次元の座標値を算出し,ストライド,ピッチ,歩隔(width)などを求めた.各被験児の歩行から走運動までの動作は,5つのパターンに分けられ,歩行からリープ動作^<1)>を経て走運動へ移行する過程は全被験者に共通してみられた特徴であった.パターン1の歩行とパターン5の走運動を比較すると,速度が1.38m/sから1.76m/sへ有意に増加し,ストライドやその身長比もそれぞれ有意に増加した.一方,ピッチは有意な差が認められなかった.また優位脚^<2)>と反対脚^<3)>に着目すると,歩行から走運動への速度やストライドの増大は優位脚側によるものであり,この時期に側性がみられることが示唆された.歩行から走運動出現の過程でパターン2-4のようなリープ動作がとらえられた.パターン2は優位脚,パターン3は反対脚によるリープであり,パターン4は両足支持局面を挟みながら,優位脚のキックによって非支持局面を頻繁に出現させるものであった.こうしたリープ動作を繰り返しながら次第に走運動が可能となると推察された.すなわち,リープ動作は歩行から走運動への発達過程における移動運動の中で1つの主要なプロセスとして考えられた. ^<1)>リープ動作:1歩において非支持局面がみられる移動運動 ^<2)>優位脚:非支持局面の出現頻度の多い脚 ^<3)>反対脚:優位脚の逆脚
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