研究概要 |
本研究の目的は,実験開始時において12ヶ月から20ヶ月の女児4名を対象として最初の走運動(1歳9ヶ月;First)を確認してからその後6歳まで毎年,縦断的に5年間にわたり走運動を観察することによって走運動の発達過程を明らかにすることであった.その結果は(1)-(4)のように要約できる. (1)Firstから6歳にかけて,走運動の速度は1.71m/sから3.78m/sへ有意に増大し,ストライドやその身長比も41.1cmから95.4cm,50.0%から85.4%へそれぞれ有意に増加した.一方,ピッチは3.82Hzから4.19Hzの範囲であり,顕著な違いは認められなかった.したがって,Firstから6歳への速度の増大はおもにストライドの増加によるものと考えられた.(2)Firstから6歳における速度の増加量とストライド,優位脚の速度および優位脚のストライドの増加量に有意な相関がみられた.(3)Firstから6歳にかけて非支持局面を含む歩隔の身長比とそのストライド比はそれぞれ経年的に減少する傾向が認められた.(4)3歳以降における膝の引きつけ角度,接地中の膝関節最大伸展角速度がそれぞれ減少し,脚全体の最大スウィング速度が増加した.また,4歳以降における接地中の足関節最大伸展角速度も増加した. 以上のことから,走り始めてから6歳までの間で走運動の発達は,(1)走運動成就以降において側性に依存した発達がみられたこと,(2)足先の外輪や膝の外転の動きが減少したこと,(3)膝関節を中心とした上下方向の屈曲伸展動作から次第に脚を前後に動かすような走動作へ変容したことが示唆された.
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