研究概要 |
本年度は,テーマ1として,加齢および持久的トレーニングがラット骨格筋および心筋の熱ショックタンパク質(HSP72)の発現に及ぼす影響,テーマ2として,自発運動によるトレーニング量と骨格筋HSP72発現量との関連性について検討した。 テーマ1では,若齢(12週齢)および老齢(100週齢)のF344雌ラットが年齢群ごとに,コントロール群および運動群の2群に分けられた(各群n=6)。両年齢群のトレーニング群には,トレッドミル上での持久走を75-80%Vo_2maxの強度で1日60分,週5日の頻度で10週間にわたって行なわせた。トレーニング期間終了72時間後,遅筋(ヒラメ筋,腓腹筋赤色部),速筋(長指伸筋,足底筋,・腓腹筋白色部),心臓が摘出され,ウェスタンブロット法により,HSP72が定量された。その結果,コントロール群のHSP72の発現量は,いずれの筋においても年齢による差が見られなかった。一方,トレーニング群のHSP72の発現量は,いずれの筋においても同年齢のコントロール群よりも有意に高い値を示したが,その増加率は老齢群で小さかった。以上の結果より,持久的トレーニングは,筋のHSP72の発現を増加させるが,老化はその応答性を低下させると結論された。 テーマ2では,若齢ラットを対象に5週間の自発運動による走行トレーニングを行い,毎日の平均走行量と遅筋,速筋,心臓のHSP72発現量との関わりについて,研究(1)と同様の手法で検討した。その結果,毎日の自発走行距離と筋のHSP72発現量との間には,強い正の相関関係が見られた。この結果より,筋のHSP72発現量は日常の活動量によって影響されると結論された。 なお,来年度以降での実験に必要である老齢ラットの作成のために,ラットの長期飼育を継続中である。
|