研究概要 |
本年度は,若齢から老齢に至る加齢変化が熱ストレスに対するラット筋組織のストレス蛋白質発現応答性に及ぼす影響を明らかにするために研究を行った。 ペントバルビタール麻酔下で,4週齢,12週齢,6ヶ月齢,18ヶ月齢,30ヶ月齢のフィッシャー系F344雌ラット(N=5)に対して,右脚のみに42℃,15分間の温浴による局部的温熱ストレスを負荷し,左脚はストレスを負荷しないコンロール脚とした。温熱ストレス負荷終了の24時間後,下腿より遅筋(ヒラメ筋)を摘出し,ウェスタンブロット法によりHSP72発現量を定量した。その結果,コントロール群のHSP72発現量は,発育期の4週齢が最も低い値を示し,12週齢以後は年齢による差が見られなかった(4週齢;100,12週齢;133,6ヶ月齢;133,18ヶ月齢;132,30ヶ月齢128)。一方,いずれの年齢群も熱ストレスに対して,同年齢のコントロール群よりも高いHSP72発現量を呈したが,その応答性は加齢とともに低下しその発現量は,30ヶ月齢の老齢ラットでもっとも小さかった(4週齢;+19%,12週齢;+7%,6ヶ月齢;+4%,18ヶ月齢;+5%,30ヶ月齢;+2%)。 これらの結果より,ヒラメ筋におけるHSP72の発現は発育に伴って一旦増加するが,その後はその発現量は一生涯にわたって維持していること,また,ヒラメ筋の熱ストレスに対するHSP72発現応答は,発育期に最も大きく,その後は加齢(老化)にともなって応答性が低下すると結論された。 なお,来年度での実験に必要である老齢ラットの作成のために,ラットの長期飼育を継続中である。
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