研究概要 |
本年度は,持久的トレーニングの時間要因が心筋の熱ショックタンパク質(HSP72および73)の発現に及ぼす影響を明らかにした。 雌成ラット(17週齢)が,コントロール群および運動時間によって3つのトレーニング群に分けられた。トレーニング群には,トレッドミル上での持久走を運動強度75%Vo2max,運動時間1日30,60,90分のいずれかで,週5日の頻度で10週間にわたって行なわせた。トレーニング期間終了72時間後,心臓が摘出され,ウェスタンブロット法によりHSP72および73が定量された。その結果,HSP73の発現量はトレーニングによる変化が見られなかったが,トレーニング群のHSP72の発現量は,コントロール群よりも有意に高い値を示し,その増加率は運動時間に依存していた。以上の結果より,持久的トレーニングは,筋のHSP72の発現を増加させるが,その応答性はトレーニングの時間に依存していると結論された。 また最終年度として,これまでの研究成果に本年度の成果を加え,本研究課題「加齢および持久的トレーニングがラット筋組織のストレス蛋白質の発現に及ぼす影響」は,以下のようにまとめられた。 1.骨格筋の安静飼育レベルでのレベルでのHSP70発現量は、速筋タイプの筋で低く,一方遅筋タイプの筋で高く,筋タイプによる特異性が見られる。 2.加齢は,安静飼育レベルでの筋組織のHSP70発現量に変化をもたらさない。 3.持久的トレーニングに対する筋組織のHSP70発現量は,トレーニング量(トレーニング時間)に依存して増大する。 4.持久的トレーニングに対する筋組織のストレス蛋白質の発現応答能は,老化によって低下する。
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