動物考古学的方法による日本、および周辺地域における古代家畜史の研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12480030
• 研究機関: 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所
• 研究代表者: 松井 章 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 主任研究官 (20157225)
• 研究分担者: 富岡 直人 岡山理科大学, 理学部, 講師 (90241504) ; 江上 幹幸 沖縄国際大学, 文学部, 助教授 (30320518) ; 石黒 直隆 帯広畜産大学, 獣医学部, 助教授 (00109521) ; 南川 雅男 北海道大学, 大学院・地球環境, 教授 (10250507) ; 本郷 一美 京都大学, 霊長類研究所・進化系統部門, 助手 (20303919)
• キーワード: 家畜 / 動物考古学 / 環境考古学 / DNA / 安定同位体食生分析

研究概要

3年間の本研究を通じて、中国への調査、1回、韓国への調査、7回と周辺地域における家畜史の研究を進展させることができた。特に韓国釜山大学と共同研究を行った金海貝塚の報告書を執筆し、今後の日韓共同研究の基盤を築くことができた。台湾中央科学院リー・クァンチー氏よりイノシシ・ブタの資料の提供を受けることもでき、日本、中国、韓国、台湾の動物考古学の共同研究の基礎を確立することができたことは大きな成果といえよう。
また、本年度も韓国嶺南文化財研究院が発掘した慶山林堂遺跡出土の動物遺存体の研究を行い、本遺跡と日本の3世紀前半の松山市宮前川遺跡群を残した人々と密接な関係があったことを確信することができた。次年度以降も、動物遺存体を通じて古代の人と文化の動態を明らかにしていきたい。
国内では、共同研究者の江上幹幸氏のアラフ遺跡の発掘に参加し、離島におけるブタ・イノシシ飼養に大きな成果を挙げることができた。共同研究者の石黒直隆、南川雅男らとのDNA、安定同位体による家畜種の判定とその系統の研究は、成果が次々と出て、各学会、マスコミなどから大きな反響が帰ってきている。
この科学研究費補助金による成果として、国内外の学会、研究会において口頭発表を毎年数件ずつ行ってきた。

研究成果

• [文献書誌] Yasuo Morii, Naotaka Ishiguro, Takuma Watanabe, Masuo Nakano, Akira Matsui et al.: "Ancient DNA Reveals Genetic Lineage of Sus scrofa among Archaeological Sites in Japan"Anthropological Science. 110・3. 313-328 (2002)
• [文献書誌] Takuma Watanabe, Naotaka Ishiguro, Masao Nakano, Hiroto Takamiya, Akira Matsui et al.: "Prehistoric Introduction of Domestic Pigs onto the Okinawa Islands : Ancient Mitochondrial DNA Evidence"Journal of Molecular Evolution. 222-231 (2002)
• [文献書誌] 南川雅男, 松井章: "炭素窒素同位体による食性解析に基づくイノシシの家畜様式の判別"日本文化財科学会第19回大会研究発表要旨集. 38-39 (2002)
• [文献書誌] Akira Matsui, Masaaki Kanehara, Masako Kanehara: "Palaeoparasitology in Japan -Discovery of toilet features"Memorias do Instituto Oswaldo Cruz. 98. 127-136 (2003)
• [文献書誌] Akira Matsui: "The Existence of Domestic Pigs in Prehistoric Japan by means of Archaeological Scientific Methods"International Congress on Archaeological Science. (Preprints). 24-25 (2003)
• [文献書誌] 藤田正勝, 松井章: "鳥添大里グスク出土の動物遺存体"大里村文化財調査報告書第4集 大里城跡. 93-102 (2003)