本研究の目的は、学校数学における「文字の式」が数学的問題解決活動を展開する際に思考の道具として機能することを、規範的に教材を開発し、かつ授業実践を通して実証的に示すことである。本年度は「文字の式」の利用のための教授課題を開発した。 1)「文字の式」が思考の道具として利用できることを明示的に示す教材を開発した。 [1]数のパターンの発見とその一般的証明の文脈具体的には平方数の和と差にみられる数パターンに着眼した教材を開発した。 [2]関数の性質をグラフの形状とその式による特徴・変形から考察する文脈2次関数y=ax^2+bx+cについて、acを固定しbを変化させた場合や3次関数を3次式、2次式、1次式の和や差とみる見方を養うための教材を開発した。 [3]図形を対象にした問題解決において、「文字の式」を活用する文脈積が一定となる場合を図的表現として視覚化し、これを具体的な問題解決に活用できることを示す教材を開発した。 2)開発した教材を授業において実践できるように検討した。 開発した教材の一部(上記[1][3])を大学学部の授業で試行し、中学校高等学校での実践のための基礎資料を得た。また[2]を実践するためにグラフ電卓の活用を考察した。 来年度は、さらに新しい教材を開発するとともに、授業実践を試み、その結果を整理して「文字の式」が数学的問題解決過程で思考の道具として機能する様相を明らかにしていく。
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