本研究の目的は、学校数学における「文字の式」が数学的問題解決活動を展開する際に思考の道具として機能することを、規範的に教材を開発し、かつ授業実践を通して実証的に示すことにある。 本年度は昨年度に引き続き「文字の式」の利用のための教授課題を開発するとともに、擬変数の重要性を明らかにし、擬変数に焦点を当てたてインタビュー課題を開発し試行した。 擬変数の重要性は論文Fostering an understanding of algebraic generalisation through numerical expressions : The role of quasi-variableとして平成13年12月9日-14日メルボルン大学で開催された国際会議で発表し、K.Stacey他編集のプロシーディングThe Future of the Teaching and Learning of Algebra(ISBN 0-9579673-0-6)pp.258-264に所収された。 開発したインタビュー課題は、2位数-1位数、3位数-1位数で繰り下がりがある場合で、減数を引かずに逆に足してから10を引くという方法の妥当性および一般性を問うものである。この課題をオーストラリアメルボルン大学のステフアン教授と共同で開発し、メルボルン市内の小学校第3学年および東京都小金井市の3年生に試行した。インタビュー調査の結果は、平成14年5月にシンガポールで開催される国際会議で発表することになっている。 来年度は、さらに新しいインタビュー調査課題を開発するとともに、インタビューの成果を踏まえて授業指導案を作成しその実践を試みる。また、これまでの本研究における成果を整理して総括する。
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