研究の第一年目は、問題解決能力を育成するための教育内容の開発を理科を事例にして行った。それは、問題解決能力の育成は、学習する内容が問題解決的に構成されていることと深く関わっているという前提にたっている。具体的事例として構想したものは、現行中学校理科で学習する「電磁気」である。理科で学習する基礎的・基本的内容である「電磁誘導の法則」が総ての発電の原理であることから、それを利用して手動の発電器を作成し、その後発電のエネルギー源についての学習、電気製品と日常生活との関わりの学習、現代社会における電気エネルギーへの依存に関わる環境問題についての学習へとつながる内容を構想しまとめた。 また、問題解決能力を育てる評価方法の開発に関わる具体的例を作成し、二種類の調査を行った。一つは小学校理科の「てんびん」、もう一つは中学校理科の「電磁石」に関わるものである。新しく開発した評価方法は、同一紙面内で左右両端に問題を提示し、問題を挟んだ真ん中の欄に両方の回答を書かせるものである。つまり、左欄の問題で問うた内容をさらに深めて右欄の問題で尋ねるように工夫してあるので、中央の同じ欄に回答が書き込めるわけである。このようにすることにより、一枚の用紙の中で、基礎的内容と発展的・応用的内容を同時に、しかも連続して調べられるようにした。 それを用いて調査した結果、問題解決能力を評価する新しい方法を用いると、通常の評価では得られない学習者の実態が明らかになった。例えば、たとえ単独で基礎的な内容を聞いた場合にそれが理解できていたとしても、具体的問題解決場面では発展的・応用的内容に含まれる基礎的内容の理解が不適切になってしまうこと、などである。
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