本年度は、「問題解決能力を育成する教育内容及び評価方法の開発に関する研究」の終わりの年であるので、研究の総括を中心にして行った。そのため、問題解決能力の育成に寄与すると考えられる評価方法の基本的理念と具体例を『学びの意味を育てる理科の教育評価』(堀、東洋館出版社、全156頁)として平成15年10月に出版した。その中では、これまでに行われてきた評価方法については新しい活用方法を提案した。たとえば、概念地図を用いるものについては、一枚の用紙の中で学習前後を比較させ自己評価させる方法などである。また、まったく新しい評価方法である「文章分析法」、「一枚ポートフォリオ法」などを提案した。その背景にあるのは、問題解決能力を育むもっとも大きな要因の一つは、子どもが自分自身の学習履歴を通して学習による変容であることを、理論だけでなく具体例を通して示した。 さらに教育内容に関しては、教育内容構成の要因として、子ども、教師、自然科学、社会の四つの要因が挙げられること、その四つの要因の中で何が重視されるかは時代背景や教育観により異なることなどを検討した。それを踏まえて、教育内容構成の問題として、教育内容構成の順序により不適切な知識や考えが形成されることがあること、子どもが学校で学習しなくても知っている用語であっても教育内容として取り上げられない問題点などをあげ、教科書などが必ずしも問題解決能力を育成する構成となっていないことを明らかにし、問題点克服のための提言を行った。 最後に四年間の研究として発表したもの及びあらたに書き下ろした内容を加えて、全11章の報告書を作成した。
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