本研究は、問題解決能力を育成するために以下の二点を中心にして研究を行った。一つは、問題解決の能力を育成することができるように教育内容構成の開発を行うことである。もう一つは、問題解決能力を育成することができるための評価方法を開発することである。前者は、中学校理科における「電気」の単元を中心にして、コイルの中に磁石を出し入れすると電流が発生するという現象から、社会および環境における電気に至るまで、広い視野から総合的に内容を構成する事例を作成した。それは、問題解決の能力の育成のためには、学校で学習する内容が日常生活とどのような関係にあるのかという相互の関連性を知ることが必要不可欠だからである。後者は、問題解決能力の育成のために教育評価がきわめて密接に関わっているという視点から評価方法の開発およびその試行と実態把握を行った。評価方法としては素朴概念調査法を始めとして七つを取り上げた。このとき、この研究によって開発されたものは文章分析法など五つである。いずれの方法も、学習前・後にどのように知識や考えが変容したのかという方法を採用した。それによって、問題解決の能力、言い換えるとメタ認知能力が育成されることが確認できた。本研究で行われた自己の変容を一枚の用紙の中で自己評価する方法は、これまでに皆無である。この研究を通して、新たな課題が明らかになった。それは、一枚の用紙の中で自己の学習の変容を把握する方法は、メタ認知能力を把握し育成するために有効であるが、学習過程を適切に把握するとさらに優れたものとなるということである。今後、学習前・中・後における学習の変容を一枚の用紙で適切に把握できる方法の開発に向けて研究を進めたい。
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