本研究は、日本とアメリカ両国において、3年間にわたって幼児が自発的にあらわす数及び量の表現を縦断的に調査し、文化的な差異の有無や、数・量の知識獲得に関わる経験に質的普遍性があるか否かを明らかにすることを目的とする。 本年度は、研究の2年目にあたる。平成12年度に引き続き、幼稚園の4歳児(3歳の時と同一の幼児)を対象として、自由遊び場面のビデオ撮影を継続的に行った。3歳半から4歳ばの1年間について、これまでに明らかになった結果は以下の通りである。 1)自由遊びの中で用いられる数表現および量表現の出現数は、日本の幼児の方が多かった(アメリカの約3倍)。 2)数表現と量表現を比較すると、日米ともに量表現の方が多く出現した。 1回の撮影での出現数(平均値)は、日本の場合は、数表現:3.2、量表現:8.5、アメリカでは、数表現:1.0、量表現:1.9であった。 3)日米ともに、数・量表現の現われ方には大きな個人差があり、同一幼児であっても、遊びの内容によって差が見られた。 4)質的分析の結果、数表現の多くは個数、人数、回数などを数えるものであり、これらの合計は、日本では数表現の62%、アメリカでは57%を占めた。 5)日本の幼児のカウンティングは正確であったが、アメリカでは数え間違いが見られた。 6)量表現に関しては、アメリカでは「多さ」に関するものが大部分であったが(66%)、日本ではその割合はいくぶん低かった(48%)。次いで、アメリカでは「大きさ」が(26%)、日本では「内包量(温度・速さ・濃さなど)」が多く現れた(33%)。
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