本研究は、日本とアメリカ両国において、3年間にわたって同一幼児が自発的にあらわす数及び量の表現を縦断的に調査し、文化的な差異の有無や、数・量の知識獲得に関わる経験に質的普遍性があるか否かを明らかにすることを目的とする。 アメリカでは、5歳になるかならないかの時点で、プリスクールから小学校一貫のキンダーガーテンに入学するが、諸般の事情により5歳以降の継続的データを得ることができなかったので、本年度はそれに代わる横断的データを収集して日本との比較を行うこととした。日本においても継続的データ数が3年の間に大幅に減少したために、横断的データの収集を行った。 日米両国における横断的データを比較した結果、次の点が明らかになった。 (1)日米ともに、5歳〜6歳児が自由遊びの中で用いる数表現および量表現の出現数及び種類は、4歳児に比べて増加した。特に数表現において、計算や金額に関する表現の増加が目立った。 (2)日本では、計算・数字の読み書きに関する表現の出現率が、アメリカよりも高かった。アメリカでは、数字を書く表現は現れなかった。 (3)量表現に関しては、アメリカでは「多さ」に関するものが大部分であったが、日本ではその割合はいくぶん低かった。次いで、アメリカでは「大きさ」が、日本では「内包量(温度・速さ・濃さなど)」が多く現れた。アメリカでは、内包量に関する表現は出現しなかった。 (4)日本で多かった内包量に関する表現は「はやく」であり、子どもを取り巻く環境の影響と考えられた。 (5)日米ともに、数・量表現の現われ方には大きな個人差がみられた。
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