日本とアメリカ両国において、同一幼児が自由遊びの中で自発的にあらわす「数・量」表現を3年間にわたって縦断的に観察調査し、これらの表現の発達的変化にどのような文化的な差異があるかを明らかにした。日米の被験児合計33名(日本18名、アメリカ15名)について、年に約10回の縦断的観察を行った結果、次の点が明らかになった。 (1)両国のデータに共通する3歳6ヶ月から5歳11ヶ月までの間、1回の観察時間(約50分)内に用いられた数表現および量表現全体の出現数は、いずれの年齢段階においても、日本の方が圧倒的に多かった(数表現:平均して日本がアメリカの7.6倍。量表現:平均4.5倍)。 (2)両国ともに、すべての年齢段階で、量表現のほうが数表現よりも多く出現した(日本の数表現:1回の観察当たり5.5回、量表現:8.9回、アメリカの数表現:1.5回、アメリカの量表現:2.2回)。 (3)数表現の内容を分類した結果、日本では、「物・人数」に関する言及が際だって多かったが、アメリカでは特に多く出現したものはなかった。 (4)日本では、数字の「読み書き」に関する表現の出現数が、アメリカよりも多かった(日本:1回の観察当たり0.3回、アメリカ:0.0回)。 (5)量表現に関しては、日米共に「多さ」に関する表現が多く出現したが、日本はアメリカの3.1倍の出現数であった。 (6)日本では「内包量(温度・速さ・濃さ等)」の多いことが特徴的であった。(アメリカの16.4倍)。日本で多かった内包量は「早く」であり、子どもを取り巻く環境(親の働きかけ)の影響と推測される。
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