研究課題/領域番号 |
12480054
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
下田 弘之 聖徳大学, 人文学部, 教授 (00017360)
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研究分担者 |
志賀 淑子 聖徳大学, 人文学部, 助教授 (90235515)
福沢 周亮 聖徳大学, 人文学部, 教授 (30008700)
吉島 茂 聖徳大学, 人文学部, 教授 (50011309)
長谷川 弘基 聖徳大学, 人文学部, 講師 (80306456)
菅 英昭 聖徳大学, 人文学部, 助教授 (60234150)
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キーワード | 複数言語学習plurilinguism / 教授法methodlogy / 態度Attitude / 正書法orthography / 教科書textbook / ゲーム / Way Stage |
研究概要 |
今年度は、スイス、中国、ドイツなど、各国で出ている小学生向けの教科書の比較分析を始め、また小学生を対象として英語の授業参観した際の映像記録を基に授業分析をした。 前者では、テキスドをデータベース化し、European Counsilから出ているWay Stagcの語彙、Speech Act表などと対比する準備を進めている。 両研究分野を通じて既に判明した点で、今後大きな教授法上の争点となるのが、文字の取り扱いである。ドイツ、オーストリアでは、3年次(8/9歳)までは文字を全く使用しないが、フランス、スイス、またOxfordで出版されている英語教科書では文字が重要な位置を占めている。 そもそも母語(国語)教育では、小学校入学の最初から、あるいはそれ以前から文字に親しむよう環境づくりが行われる所が多い。外国語の場合その母語の学習方法に準じても不思議ではないが、ドイツ語圏では五年次までは文字の導入を極力抑え、わずかに学校での学習成果を気にする保護者のために言い訳ほどの文字学習を取り入れるに過ぎない。そこには学習対象の言語との語族上の、タイポロジー上の差違・距離の問題も絡んでいると思われる。ドイツ語と英語では、特に基礎語彙では音の上では類似、あるいは同一の単語も多いが綴りは異なることも稀ではない。これらの間に表記上の差があることを教えるのは、低学年の児童にとっては大きな負担だといえる。近年ドイツ語圏で行われた正書法の改訂も、児童の負担を軽減する点に大きな比重があった。 ただこれらのことは教授法上の理論との関係でも考察する必要がある。また文字をいつから取り上げるのか、その時期、導入の方法も大きな問題となる。オーストリーで発行された小学校年次生用の英語教科書Play Wayには文字が一切ない。絵と歌が見える形として与えられているだけで、それを材料にした、ゲームなど授業中の活動が学習の中心を占める。絵も絵合わせ、切り取り、はめ込みの様な低学年児童の目常の遊びとlinkした形で使われている。 ジュネーヴでの複数言語学習plurilinguismでは、外国語学習自体より、母語以外の言語を話す人・他の文化を持った人とのコミュニケーションの受け入れる態度Attitudeを培うことに真の目的がある。その基盤の上に将来の外国語学習が期待されているのである。この点ではドイツ語圏でも大きな差はない。ただ中国の授業の観察からは、むしろ英語学習自体に力点が置かれているとの印象を受ける。この差の比較研究が次年度の課題である。
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