研究概要 |
本研究では,個人記憶マネージメントとコミュニティ記憶マネージメントを連携させて,個人記憶とコミュニティ記憶の相乗的発展を図る.記憶における物語性の果たす役割に注目し,個人記憶を一定の情報の流れをもつ物語の集まりとして構成することによって説得力を高めるとともに,コミュニティ記憶の理解と個人化を支援する記憶マネージメントシステムのデザイン・実現・評価を行う. 本年度,得られた成果は次の通りである. (1)物語性に着目した個人記憶の形成と共有の支援 情報の発生した現場で個人が物語記憶を形成し,保存・管理・コミュニティ向けに開示する過程を支援するソフトウェアシステムのプロトタイプを試作して,実験的検証を行った.このシステムは,ユーザ個人の興味を記述したプロファイルに基づいて,到着したメッセージを分類し,ユーザの興味や背景知識にもとづいて物語化する.さらに,リアクティブプランニングの手法を用いて,ユーザの問題解決の構造に従って提示する情報内容を選択することによってユーザの意思決定を支援する手法も開発した. (2)物語性に着目したコミュニティ記憶の形成と個人化の支援 コミュニティのメンバーの記憶を外化して本人の代理に交換する機能をもつエージェントを用いて,コミュニティメンバーの個人記憶を統合してコミュニティ記憶を構成する方法について,プロトタイプ構築による実験的検証を行った.この方式は,個人記憶の断片をオンデマンドでつなぎ,擬似的な会話形式をインタラクティブに生成するところが特色である.また,遺伝アルゴリズムを用いて,大量・不均質情報のなかから,ドキュメントを再構成する方式の研究開発を行った.
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