研究概要 |
本研究の目的である(1)背景雑音が聴覚末梢系から中継核系に果たす役割と(2)聴覚系の形成過程での自発的神経活動の機能的役割を知るために,平成12年度は,以下の計画実行とそれによる成果を得た。 (1)電気生理実験の設備および測定系の構成. 本年度が研究計画の立ち上げ年度に当り,生理学実験のための基本的な設備を整えた。さらに,聴覚中継核および第一次聴覚野の脳切片の電気的活動測定のための多配列電極システムを完成した。これにより,現在,この測定システムにおいて予備実験を繰り返している段階である。その結果,測定試料の調整を工夫することにより,安定して電気的活動測定を行うことが可能になった。また,神経回路網の電気的な活動を誘発刺激によって制御するための刺激コントローラを作成した。これにより,細胞内外から電気的刺激を加えることが可能となり,神経細胞と回路網の非線形特性の測定が可能となった。 (2)計算機モデルおよび理論応用のための計算機環境の整備. 聴覚中枢におけるモジュール情報の統合過程を模擬する計算機モデルの構築を行うため,各モジュールの計算機モデルの作成を終了した。現在,これらのモジュールを組み合わせ,計算機上に効率よくそのモデルを実装する作業を実行している。また,単純な神経回路網モデルにおけるrandom dynamical systems理論応用のためのシミュレーションについては,基本的な検討段階は終了し,この結果をまとめ,Physical Review Eに投稿し,受理された。
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