研究概要 |
哺乳類(ヒト,ネコ,モルモット)や鳥類(フクロウ,コウモリ)の聴覚系は,並列的かつ階層的に処理される。したがって,聴覚系の神経機構と機能を知るには,各モジュールが各階層でどのような機能を分担し,脳の高次中枢でどのような統合を行うかを理解する必要がある。本研究では,研究の第一歩として,背景雑音が音情報における信号検出に果たす積極的な役割という観点から,音情報が聴覚系の階層(特に,神経核と聴覚野)でどのような処理を受けるかを生理実験と計算機モデルによって検討した。まず,ラットの聴覚神経核の脳切片の電気的活動を記録するため,多配列電極計測システムを構築した。ラット脳の培養神経回路網の活動を経時的に測定し,発達に伴う神経細胞の活動の変化を線形・非線形解析の手法を用いて調べた。この結果から発達に伴って,特徴的な活動パターンが発生することが判った。この結果をまとめ,Physical Reviw E(PRE)に投稿し,受理された。また,簡略化された神経細胞と背景雑音を模擬するモデルを用い,雑音が神経細胞に果たす機能的役割を考察するため,モデルの振る舞いを計算機シミュレーションによって調べた。この結果,背景雑音が引き起こす特徴的な現象が存在することがわかった。この現象は,生体内での聴覚系においても,観測される可能性があることが計算機シミュレーションから示唆された。本研究の結果は,Physics Letters AとPREに投稿し,受理された。
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