研究概要 |
初年度は、設備の充実を行うとともに、「音オントロジーの音楽情報処理に関連する部分の設計」、および、「音オントロジーによる楽音の階層構造の認識法の確立」に焦点を絞り、研究を進めた。 1.設備の充実-音響入出力装置の導入、音楽認識用の設備として、最高速PCと信号処理および統計処理用ソフトウェアシステムを導入した。また、音楽データとして、音響測定用の音楽CDの収集、および、カナダ・マギル大学で収録した楽器単音のCD集を購入した。 2.音オントロジーの設計とシステムの開発-単に個別の楽器音だけではなく、弦楽器なのか管楽器なのか、トランペットなのかフルートなのか、と楽器音の認識にはさまざまなレベルが存在する。そのためには、楽器音の発音過程に注目する必要がある。たとえば、ピアノの場合は、シンセサイザでは、attack,decay,sustain,releaseという4つの過程に分解できる。従来の研究では、sustainに相当する定常状態の部分だけを取り扱っているものが多く、attack,decayなどの変化は統一的な扱いが難しいために大量のデータを扱う場合には余り注目されてこなかった。本研究では、変化部分の特徴をとらえることによって、楽器音の階層的な表現を行うことを検討した。 3.音オントロジーによる楽音の階層構造の認識法の確立-上述したように、楽器音の定常部分だけでなく、変化部分の特徴をとらえた特徴量を用いて、実際の楽器音認識にどの程度有効であるかを検討した。本研究でのアイデアは、音高(基本周波数)によって楽器の特徴量から得られたテンプレートの集合を切替えることにある。現在、MIDI音源からのさまざまな楽器音に対して、音高によって特徴テンプレートを切替えることによって、ピアノ、バイオリン、ギター、フルート、トランペットの認識率が向上し、基本周波数によるテンプレート選択の有効性を確かめることができた.
|