研究概要 |
2年計画の本研究の最終年度となる今年度は,前年度で考案した放送データのスケジューリング方式およびキャッシング方式に基づいて,プロトタイプシステムの実装を行い,その動作確認を行った.その結果,明らかとなったいくつかの技術課題を解決するために,考案手法の改良を行った.具体的には,クライアントが相関性をもつ複数のデータ項目に対して,時間間隔をおいてアクセス要求を発生することが多いことに着目して,相関性の強さとアクセス要求発生の時間間隔を考慮するように考案方式を拡張した. さらに,クライアントにおいて,膨大な量の放送データから必要なデータのみを効率的に受信する方法論について,二つの側面から強力に研究開発を推進した.まず,データ受信時に必要なデータのみを効率的にフィルタリングするための数学的基盤として,フィルタリングの関数的性質や,関数間の関係について考察を行った.次に,フィルタリングを効率よく実行するためのシステム基盤として,あらかじめ定義したルールに基づいて受信データの取捨選択や加工を行うアクティブデータベースシステムを開発した. また,放送データがビデオ映像や音声データなどの連続メディアデータである場合を想定して,クライアントがこれらを途切れることなく,かつ,短い応答時間で受信することが可能な放送データのスケジューリング方式を考案した. 最終的には,以上のような研究成果を統合し実システム上に実現して,十分な運用評価を行うことが目的であったが,残念ながらそこまでには至らなかった.しかし,本研究で得られた個々の研究成果を取りまとめたものは,国際学会の論文誌を始めとする様々な分野でその重要性が見とめられ,高い評価を受けている.したがって,これらの研究成果は,将来のディジタル放送環境において,膨大な量の放送データを効率的に送受信するための核技術となりうることを確信する.
|