研究概要 |
前年度までに構築したインタフェース・システムに基づいて6名の重度視覚障害者の協力を得て評価実験を行い,以下の点を明らかにした。(1)操作訓練:触覚グラフィック・ディスプレイと触覚マウスの操作は,構築したホットキー機能によって,約30分の教示と1時間半程度の自由練習で各参加者とも使用可能になった。(2)パターン認知:対象の表示領域の小さい触覚マウスは触覚ディスプレイよりもパターン認知能力が劣ることが示されたが,使用回数が増加するに従って両者の差が縮小することが明らかになった。(3)GUI操作:触覚デバイスとホットキーの併用によって視覚画面に提示されるマウスポインタを操作できるようになった。(4)画面上の図形探索:触覚デバイスとホットキーの操作によって視覚画面に提示された単純図形の探索が可能になった。(5)探索による認知:聴覚モダリティを使用するスクリーン・リーダーと触覚モダリティを使用する触覚デバイスの併用によってレイアウト画面の探索による認知課題は33%の参加者については可能であった。 以上の実験結果からシステムの改善点として,(1)触覚デバイス上のポインタ表示を一過性から持続性へ変更する。(2)一般のマウスやキーボードマウス機能を利用できるようにする。(3)ソフトウエア対処により、ポインタ制御精度を容易に選択できるようにする。(4)予め画面探索に適した固有機能を提供する。(5)表示面の周囲にスケールを配置して移動量と方向情報のガイドにすることなどが必要である。 この研究の総括として今後実施すべきことは,(1)ディジタイザ機能とマウス機能の融合や、音声情報との組み合わせ方法など、空間情報にかかわるインタフェースのあり方を検討する。(2)高い表示密度を備えた小型触情報提示モジュールを開発する。(3)既存のアプリケーション、あるいはタスクに重点を絞り、その使用を念頭においてインタフェース・デザインを行う。
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