研究概要 |
都市空間における移動の「時間分布」を求めるために,本年度の課題は以下の2つであった. 1)4次元の多面体の容量を効率的に計算するアルゴリズムの開発 2)一様な直線を介しての計算方法 結果としては上記2)に関して研究が進展した.まず,市区町村のような不定形の領域における「距離分布」を,一様な直線を介して数値的に厳密に求めるアルゴリズムを開発した.もっと詳しく述べると,不定形領域内部で発生・集中するような移動についてそれらの移動距離の分布を厳密に求めるアルゴリズムを作製したことになる.さらにこの方法を応用することで,相異的な2つの不定形を出発地・到着地とする移動の距離分布をも計算することができた. この数値計算アルゴリズムは,領域内に密に打った点間の距離を計算する従来の数値計算方法に比べて,格段に高効率に距離分布を計算できる手法である.実際に,理論式によって陽に距離分布が求められる数少ない例(円や長方形)について,式で表される真の分布と従来方法および一様な直線を用いた方法で数値的に求めた分布を比較すると,従来方法では尤もらしい分布を得るには非常に多くの計算量を要するのに対し,一様な直線を用いた方法はある程度密に一様な直線を分布させれば,真の分布とほとんど差違が認められないことがわかった. この数値計算方法を用い,実際例として東京23区内の移動を分析した.各区内々の移動およびあらゆる"区どうし"の(幾何学的)距離分布を,国勢調査で集計されている現実の移動量データを用いて総移動量を調整することで,東京区内における移動の距離分布をきれいな形で求めることができた.この結果は,交通機関の利用実態などを併せて考慮することで,都市内の移動時間分布の推定に展望を開くものである.また求められた距離分布は予想に反して滑らかで単純であり,今後,理論と実証の両側面の展開に稔り豊かなものが予想される.
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