研究概要 |
前年度の開発した都市水害に関する氾濫解析モデルを適用して,わが国の代表的都市河川であり低平地河川である寝屋川(大阪府)流域における氾濫災害の発生機構を考察した.この解析では,対象領域を山地部,河川網,下水道網,堤内地に分割し,それぞれの部分領域にキネマティック・ウェーブモデルによる流出解析,特性曲線法による一次元不定流解析,下水道の流下能力の上限を考慮した連続式のみによる解析,非構造格子モデルによる二次元氾濫解析を用いている.主な水害実績と解析結果を比較し氾濫特性の再現性を確かめるとともに,戦後最大の実績降雨に対するシミュレーション解析により,内水氾濫の危険域や各種治水施設の効果を論じた. 地下浸水に関しては,地下鉄および地下街を複数の貯水槽が連なっている空間としてモデル化するとともに,運動方程式に代わって越流公式などの流量公式を用いて簡易化した.このモデルを大阪梅田の地下街・地下鉄空間に適用し,複雑な地下空間の浸水過程の解析が可能なことを示した.また,地上の地盤高(浸水位)などが地下の浸水形態に及ぼす影響や,地下鉄空間を通じた浸水伝播のおそれなどを明らかにした. 都市水害の危機管理あるいは安全対策に関して,福岡水害や東海水害の事例から都市水害の特徴をまとめた.わが国多くの都市は,自然的条件および杜会的条件からみて外水(河川,海)および内水による氾濫災害を受けやすい宿命にあること,都市化の進行とともにますます水害脆弱性が増加していることなどを指摘した.また,治水施設の整備というハード対策とともに,予警報システムと情報伝達,避難計画,ハザードマップによる啓発と予備知識の充実など,ソフト対策が都市水害の被害軽減にとって重要な課題であることを論じた.
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