研究概要 |
本研究では,異常ドップラー効果による遅波サイクロトロン共鳴相互作用の誘導放射を利用し単一スペクトルの電磁波を得る遅波サイクロトロンメーザを提案している。平成12年度に計画・実施した内容を以下にまとめる。 (1)磁場システム製作と評価 内径φ150mm,水冷式の磁場コイルおよび最大電流値500Aの磁場電源により,磁場配意が可変な磁場システムを新たに構築した。磁場の実測結果と数値計算との比較より,磁場配位と調整範囲を検討した。 (2)遅波導波管の設計・製作および予備実験 周期的コルゲートを用いた遅波導波管を設計・製作し20GHz帯と40GHz帯のマイクロ波発生実験を行った。磁場システムと遅波導波管の整合に予想以上に時間がかかり,予備実験では,磁場を印加した実験ができなかった。 (3)電子ビーム源の製作と試験 マルクス発生器およびパルス形成線より成る高電圧パルス電源を用いて,エネルギー70keV,電流値100Aの電子ビームを発生させた。陰極は冷陰極であるが,新たに考案した陰極構造を用いることで,パルス幅は目標の200nsより広がり,1μs程度が実現できた。 上記のように,ほぼ計画通りに研究は進んだ。(3)では,冷陰極を用いたロングパルス・電子ビーム源の可能性の示唆しており,予想以上の成果といえる。しかし(2)では,磁場によるビームの制御が不十分で,得られたマイクロ波電力は低かった。製作した遅波導波管により,設計通り20GHz帯と40GHz帯のマイクロ波が得られており,今後,磁場によりビームを制御することで,発振電力を向上させることを計画している。
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