研究概要 |
平成14年度の研究業績を以下にまとめる。 1.異常ドップラー効果による遅波サイクロトロンメーザの動作実験 Kバンド大口径周期的波形導波管により,チェレンコフ相互作用と遅波サイクロトロン相互作用によるマイクロ波発生について調べた。発振周波数は20〜25GHz,発振電力は最大で約100kW(約2%)が得られた。特に,磁場強度と発振マイクロ波の関係では,比較的低磁場の0.4T付近で非軸対称モードの発振が確認された。回転角方向のモード数は1あるいは2と考えられる。磁場強度を上げることで,チェレンコフ相互作用による後進波発振器動作に移行し,軸対称TMモードの発振が得られた。非軸対称モードの発振は遅波サイクロトロン相互作用によるものと考えられる。低磁場では異常ドップラー効果による遅波サイクロトロン相互作用が有効であるという理論的予測と定性的に一致しており,非常に重要な結果といえる。 2.高周波数化の実験的研究 Qバンド大口径波形導波管を使用して高周波数化の実験を行った。周波数約35GHzのマイクロ波が得られた。発振電力は最大で30kW程度以下(発振効率は約0.4%)で,Kバンドに比べ約1/4程度であった。発振に必要な波形導波管の長さは10〜20周期以上であることは,Kバンドと同じであったが,非軸対称モードの発振には,Kバンドより長い遅波導波管を必要とした。また,低磁場で周波数の高い高次モードでの発振が観測されたが,不安定であった。高次モードでの動作には,低磁場領域における安定化動作を検討する必要がある。 ほぼ計画通りに研究は進展した。遅波サイクロトロン相互作用とチェレンコフ相互作用との共鳴動作には至らなかったが,この動作にはビームの精度の高い制御が必要である。磁場配位などによる大電流電子ビーム伝播の高精度な制御および低磁場領域での安定化動作の技術開発が今後の課題といえる。
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