研究概要 |
昨年度からの継続課題として,圧力波発生装置の設計ならびに試作を行った.その性能は期待していた条件を満足するものであることが分かった.この発生装置を用いると,管断面にわたってほぼ平面的な圧縮パルスを発生させることが可能になり,しかもパルス波の背後に負圧が発生しないことを確認した.この装置を用いて音響孤立波の検証実験を行った.実験結果を数値シミュレーション結果と比較すると大変よい一致が見られ,音響孤立波の存在が確固たるものにされた.成果はJ. Fluid Mechanicsに投稿し,現在印刷中である.また,この内容は平成16年4月に京都で開催される国際音響学会議(International Congress on Acoustics 2004)で招待講演として発表予定である. 一方,ループ管路にこの発生装置を取り付け,圧力パルス波の伝播の実験を行い,ループ管内の伝播の様子を調べた.次いで管に温度勾配を設ける実験を行うために,薄い銅板を何枚も重ねたスタックの設計および試作,実験を行い,最適な形状等を求めた.材質的ならびに幾何学的な制約のため,温度勾配の大きさが理論で用いた値より大きくなりすぎることや,温度勾配を定にすることも難しいことが判明した.現在,より適当なスタックの設計を検討しているが,近々完成予定である. もう一つの課題である,定在波型の熱音響式の熱機関に用いられる大振幅の圧力波の発生については,既に示した理論と実験の比較を行っている.様々な形状の共鳴器を取り付けられるような管を製作した.特に,衝撃波の発生を抑える最小の共鳴器を求めた.これらの結果は,パリで開催された超音波世界会議(World Congress on Ultrasonics 2003)の招待講演として発表した.共鳴器の取り付け方による衝撃波から無衝撃波への移り変わりについては,前述の国際音響学会議で発表予定である. これまでの4年間の研究を通して,現実に音響孤立波は存在することが示され,管路に沿って温度勾配を設けるとそのエネルギー流束が増幅できることが理論的に示された.現在その実験的確認を進めているが,当初計画していなかった衝撃波を伴わない大振幅の圧力波の発生を含め,研究課題は概ね達成できた.
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