研究課題
地上において、二次宇宙線中の高エネルギー中性子成分が半導体素子内で核反応を起こして、それから生成する荷電粒子がソフトエラーを発生させるということが起こる。近年、素子の集積度が上がりその利用が増えたために、これまで全く問題にならなかった地上の中性子の調査が重要となってきた。一方、11年周期で太陽活動は極大期に達する。極大期には数多くのフレアや黒点が発生する。本年はその極大期にあたり、太陽フレアによる突発的な中性子線量の増加が観測される可能性がある。本研究では中性子の影響が特に問題となる太陽活動の極大期において、地球環境中の中性子エネルギースペクトルを連続測定し、特にその太陽活動の変動に伴うスペクトル変動を測定する。測定には5個の2インチ径^3He検出器内蔵の多減速材付検出器、通称ボナーボールと、5インチ径^3He内蔵のレムカウンタを用いる。測定場所は2001年2月までは、東北大学工学部機械系共同棟内の研究室である。この場所は6階建てビルの2階である。2001年2月以降、東北大学川内キャンパス内屋外に設置したプレハブ内にて測定する。測定は、2000年11月から行っている。測定項目は^3He検出器内蔵多減速材付検出器によるスペクトル変動測定、および、5インチ径^3He内蔵レムカウンタによる中性子線強度変動測定である。この間11月8日に大規模なフレアが起こった際、その数日後に明らかなカウント数の増加が確認できた。また、観測した中性子線強度の数ヶ月間の時間変動を現在解析中である。太陽活動、気圧などの気象変化などとの相関が確認できるであろう。研究室内の測定では建物のコンクリートによる遮蔽効果が大きかったが、屋外プレハブへの移設後は観測できる宇宙線中性子のカウント数が増加する。これにより、より精度良い測定が可能となるだろう。