研究課題
本研究では、中性子の影響が特に問題となる太陽活動の極大期において、地上における中性子エネルギースペクトルを連続測定し、その太陽活動の変動、特に太陽フレアーに伴うスペクトル変動を明かにする。この測定には5個の2インチ径球形^3He検出器内臓の多減速材付検出器通称ボナーボール、5インチ径球形^3He検出器内臓のレムカウンタ、及び5インチ径5インチ長のNE213有機液体シンチレータを用いている。地上における中性子測定は2001年2月までは東北大学工学部機械系共同棟(6階建て)内の2階研究室で行っていたが、その後は東北大学川内キャンパス内屋外に設置したプレハブ内で測定している。ボナーボールと有機液体シンチレータによるエネルギースペクトルの測定、レムカウンタによる線量測定は1年ほど継続しており、この間に何回か大規模なフレアーが発生している。フレアーの発生と地上における中性子の量(中性子束強度や線量)の相関関係を、気象衛生での観測データと比較して検討しているが、正の相関がある時と、逆に負の相関がある時があって、複雑である。これは我々のデータだけでなく、外国のデータでも同じ現象を示している。ただし、大規模なフレアーが発生した時は、中性子スペクトルの高エネルギー成分(100MeV近辺)が増えることが明らかになった。これは太陽からの高エネルギーの発生の増加、あるいは高エネルギー中性子の直接伝播によるものではないかと想像される。また、気圧の変化も同じに測定しているが、わずかに気圧との負の相関が観測されている。