研究課題/領域番号 |
12480142
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鷲尾 方一 早稲田大学, 理工学総合研究センター, 教授 (70158608)
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研究分担者 |
柏木 茂 早稲田大学, 理工学総合研究センター, 講師 (60329133)
濱 義昌 早稲田大学, 理工学総合研究センター, 教授 (40063680)
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キーワード | 逆コンプトン散乱 / 軟X線 / 電子ビーム / レーザー / 高周波電子銃 / X線顕微鏡 |
研究概要 |
本研究では、数MeVの相対論的エネルギーを持つ高品質電子ビームと赤外(IR)レーザーパルスとの逆コンプトン散乱プロセスを高精度に制御し、高度化することを目的にしている。我々が構築してきた逆コンプトン散乱X線源のシステムでは、半値全幅で約10ピコ秒の電子ビームとレーザーパルスを衝突させるため、数ピコ秒で両者の時間を制御する必要がある。そして生成X線の高輝度化のために電子ビームとレーザーパルスをできる限り小さなサイズまで絞込み精度良く衝突させ、更に電子ビームとレーザーパルスの強度の増強が必要である。 今年度、衝突レーザーパルスのエネルギー増強のためフラッシュランプ励起のアンプを構築した。これにより、パルスあたりのエネルギーを昨年度までの約10倍まで増幅する事に成功した。電子ビームとレーザーパルスの位置合わせには、100ミクロンの厚さまで研磨した蛍光スクリーンを用いることで、スクリーン上での電子ビームとレーザーパルスのにじみを抑え高精度な位置合わせを実現した。これまで問題となっていたピコ秒精度での電子ビームとレーザーパルスの時間調整について、ビームラインにピンホールの空いた合成石英の片面にアルミコーティングしたものを挿入し、電子ビームが合成石英を通過する時に出すチェレンコフ光とピンホールを抜けてくるIRレーザーパルスをストリークカメラで測定する事により、高精度な時間調整システムを確立した。これらの、高精度な空間・時間的な衝突の制御およびIRレーザーパルスの増強の結果、2003年1月にマイクロチャンネルプレートを用いた真空中での軟X線観測に成功した。生成されたX線の最大エネルギーは約300eV、検出された光子数は1パルスあたり約6000個でエネルギー幅は約1%と大変単色性の良い軟X線パルスであった。 我々は、世界最小の逆コンプトン散乱を用いた軟X線源システムの構築に成功した。今後、生成X線パルスの特性を十分に測定し、将来的には生体観測用の軟X線顕微鏡へと本システムを応用していく。
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